●野生の生きものとのコミュニケーション

 

自然の中にいるときや、野生の生きものとコミュニケーションをとろうとするとき、わさわさと体を動かさないことも大事ですが、それよりももっと大切なのは心の静謐さ、存在のエネルギー的な平和だといいます。

 

ネイティブアメリカンの大地と共に生きる術や哲学、アウェアネス、サバイバル術を指導されているWILD AND NATIVEさんの合宿に参加したことがあるのですが、そこで最初に教わるのも、私たち人間がたとえば森に入ったとき、どれだけ森の中に波紋を起こす か、それが鎮まるまで、どれだけじっと静かになっていかなければいけないか、ということでした。

 

音を立てないように細心の注意を払って歩く、というのは、エネルギー的にはものすごく大きなノイズを立てているのと同じになってしまうようです。

 

多少音がしたりしても、意識が静かでニュートラルで広やかあれば、そのほうがエネルギー的には静かです。ニュートラルで広やかな意識を持つために役立つのが、「パノラマ視野で見る」こと。どこか一点に焦点を合わせて見るかわりに、周辺視野も含めた全体を、ほわーっと見るつもりになってみましょう。

 

顔を正面に向けたまま両手を左右に広げて、指先をチロチロ動かしながら、両手をだんだん後ろへと引いていってみると、左右両方の指先がぎりぎり視界に入るその範囲が、結構広いことがわかると思います。わたしたちの「周辺視野」は結構な範囲まで、見えているんですね。

 

その広い範囲で見えているものが、目に入って来て、さらにそこから後頭部にまで到達して、そこにある脳の「視覚野」で見ているつもりになってみるのが、おすすめです。「目玉」で見ているのでなく「後頭部で見ている」つもりになってみてください(これはアイボディメソッドのPeter Grunwaldさんから教わったことのひとつです。くわしく知りたい方は、サイトをご覧ください)。

 

周辺視野を含めた広やかな全体を、後頭部で見ているようなつもりになってそこにいるのと、射抜くように一点集中して見ているのとでは、居合わせている(見られている)方にとってだいぶん違います。(人間同士でも、背後から誰かに見つめられているのがわかったりしますよね……)。

 

野生の生きものは、コミュニケートしようとしても、そうすぐにおしゃべりしてくれたりはしないようです。

 

それよりもまずは、野生の生きものが、こちらがまるでここにいないかのようにふるまってくれたら(生きもの自身の関心事に沿って行動してくれたら)、それを一番のごほうびと考えましょう(たとえば一瞬にしてフリーズしていた虫が、おもむろに後ろ脚で触角をなでつけはじめる、など……)。

 

静かに落ち着いて一緒にいることができて初めて、コミュニケーションの可能性が開くのだと思います。