ミノムシとの対話

気づいたら、部屋の天井にみのむしがいたのは、木曜日の夜。

夕食前に、何かが天井にくっついてるのを見つけた。枯れ葉のかけらがいくつか丸く固まったような中に赤い色紙のカケラのように見えるもの混ざっていて。天使みたいなシルエットで天井がら縦にぶら下がってた。見上げていると、ゆらゆらと揺れた。室内の微風で揺れているんだと思った。

その後、その部屋で夕食を食べ終わってふと見上げたら、さっきの物体が天井を1メートルくらい南に移動していた! ものすごくびっくりして、改めて椅子に登って近寄ってみて見たら、微風で揺れているんでなくて、この枯れ葉の塊の中に入っている人が歩いたりもぞもぞしたりしているから全体が揺れていたとわかった!

で、なんだかわからなくて最初ちょっとこわくなったけど、みのむしなんだと結論したら安心して、そして愛着が湧いてきた。

みのむしは、小枝を寄せ集めた蓑をつくるイメージしか持ってなかったので、枯れ葉をピラピラと天使の羽根みたくくっつけているこのみのむしは、自分には新しかった。気にしていると、どんどん天井を移動した。

翌朝も部屋の別の隅まで、ミノムシにとっては結構な距離を移動していた。見上げると、蓑から顔をだしてもぞもぞしたりした。

その日から3年ぶりに泊まりでお客さんがくるのと青空市に出店する準備とでパタパタしていて、そして青空市の翌日はくたびれてバタンキュー状態で、この日こそみのむんがリビングの天井暮らしで大丈夫なのかを聞いてみようと思ってたのに聞けなかった。

そんなこんなで、ようやく今日になって、落ち着いた気持ちでみのむんとコミュニケートを図ることができた。

最初、うちに来てくれてうれしかったことを伝え、何か必要なものはないかと聞いた。天井暮らしで絶食・絶水状態なのではと気掛かりで。外のノイバラの茂みに移動させてほしいかな?それともナツミカンの木のほうがいい?などと質問してみたけど、いずれも返答はぼんやりとしていてよくわからなかった。

最後のほうで、私はほんとうにコミュニケートしたいと思っているのにうまく聞き取れないことを伝えて、自分の至らなさを心から謝った。何か私にできることがあれば、したいと思っていることを思い切り伝えた。

そしたら、「自分のことは自分でできるから、大丈夫」「見守ってくれていたらいい」というような返答を受け取った。

ほんとうにそれでいいのか?と半信半疑でコミュニケートを終えて、目を開けて、結果を相方に伝えて、見守っていればいいそうだから、とPCでの仕事に戻った。

そうしたら数分たたないうちに、「トサッ」と背後で音がした。見上げるとさっきまで背後の天井にいたみのむんの姿がない!

あわてて壁際の椅子をどかして、床に落っこちたみのむんを紙にのせて拾い上げた。

息絶えたの?みのむん!みのむん!と声をかけるが、紙の上で微動だにせず。
絶食・絶水がたたってしまったのか……と思いつつ、まじかで蓑を見られたので、ニトベミノガ特有のヘッドカプセル(脱皮する際に残した頭の殻)が蓑の入り口についているかどうかを確認した。ついてた。そして蓑の赤い色紙部分も再度確認。薄茶色の枯れ葉の間から鮮やかな赤色がのぞく、なかなかすてきなコーディネートでした。

しかしどうしよう、死んじゃったのだったら……としばらく手の上に乗せたままいたら、ぼんのり動きが。もしやまだ虫の息が、と思って、外のノイバラの葉っぱに近づけてみたら、しばらくして蓑の中から顔をだして、葉っぱにつかまった。ほっ。無事生きていました。

そのあと葉っぱの上をもぞもぞと少し移動して、落ち着ける場所まできてじっとした。

移動しているあいだ、葉っぱをかじっているのかなと思ったけど、通過した後にあんまりかじり跡などは残ってなかった。

「自分のことは自分でできるから、大丈夫」というメッセージが来てたのに、結局私が外のノイバラに運ぶことになったのは、どういうこと?と思いましたが、コミュニケートする中で「外のノイバラの葉のほうに連れて行こうか?」と伝えたときの私の発想は、私が椅子に登って、みのむんと天井のあいだに紙を差し込んでみのむんを天井からはがして連れて行く、というものだったので、「はがしてもらわなくて大丈夫、そこは自分でできる」という意味だったのかも。

とにかくコミュニケート終わってほんの数分(2分くらい)で、みのむんが急に床に落ちてきたのは、偶然ではないと感じました。。

前回のかなへび一家のときもそうだったけど、コミュニケートできていることの証を身をもって示してくれる生き物のみんな、ほんとに感謝しかないです。

#bagworm #interspeciescommunication