ズワイガニ、ムースの赤ちゃん、トンボ

(7月に手記を遡って記録)

バスタ新宿から八ヶ岳に向かう高速バスの車中で、寝なくちゃ、と思って、今ここを意図しながら目をつぶったら、baby mooseという言葉が浮かんだ。

 

え?なに?と思ったら。

 

「人から見えないところで育つものがある」というメッセージ。

 

異種間コミュ・シンポジウムで、カリブーからのメッセージを、エルダー・コパージャックさん、シドニーさん、マリーさんの3人の先住民の方々が受け取ることになったとき、一緒に受け取ってみたら、自分は「serenity」という言葉を受け取ったけど、意味とかニュアンスがいまひとつあやふや感があった。その後カリブーから伝わってくることを、コパージャックさんは「I like what I am hearing」、マリーさんは「Peace」、シドニーさんは「calm and content」とおっしゃって。「serenity」の意味を辞書でしらべたら、「落ち着いた平安」というような意味で、3人が受け取ったことととても近くて驚いたこと。

 

みんなでグリズリーベアからのメッセージに耳を傾けたときは、すぐさま「respect」、シダのときはすぐさま「gentleness」、トンボのときは少し考えてしまったけど「peripheral vision」というのがやってきたのだけど、どれも後ほどまとめ役の人が総括したそれぞれの「声」の意味あいとぴったり合致していたときも、びっくりした。

 

そうしたことを経て、異種間コミュニケーションの現実さ・リアルさについて、自分の中で静かな確信を得始めていて、それについて何か書きたい気もしていたのだけど、そこには「エゴの膨張」や「救世主コンプレックス」が入り込みそうだったから、baby mooseからのメッセージは、人目につかないままでいたらいい(発信しないでおくといい)、というもののように思えた。(でも結局、竪穴式住居に泊まる夜に親友ふたりに熱く語ってしまったおばかなわたし。。。)

 

高速バスの車中ではbaby mooseのあとにsnow cramという言葉が浮かんだ。これも唐突だった。

 

後で目を開けてから、snow clamかな?貝のなかま?と思って調べたけどヒットせず。snow crab?と思って調べたら、それは「ズワイガニ」という意味だと知った。

 

そして、mooseもsnow crabもアラスカではなじみ深い生きものだとわかった。

 

なぜかアラスカにアクセスしていたのかな??

 

高速バスを降りて、泊まり先までの農道を歩き出したら、うすいオリーブグリーンのトンボが、先を歩く相方と私の間の路上に降り立った。

 

トンボが異種間コミュ・シンポジウムに参加してくれていたことを、その場にトンボがくれていたメッセージを思い出した。「穏やかに暮らし、輝かせること」、「視界の端にあるもの」。

 

でも思い出しては、視野狭窄して、目の前だけを見ることが続いた💦

 

泊まり先について、おゆうはんのパエーリャに入れるためのエビをそばの川でとらせてもらうことになった。川辺におりていくと、琥珀色の羽根の青いボディのトンボが今度はいた。あとで調べたらミヤマカワトンボだったみたい。

 

エビをとる中で、網にかかった他の生き物と、小さすぎるエビを手ですくって川に戻したけど、その中のひとりは後で調べたらミヤマカワトンボのヤゴだった。

 

ミヤマカワトンボの成虫はこちらを向いてじっと草の葉にとまっていて、そうするうちにもう1羽もやってきてそばの草にこちら向きにとまった。

 

 

またしても、トンボからのメッセージを思い出した。

 

川辺であまりにもドカドカと、騒がしくそこにいた自分を省みた。今夜は縄文式竪穴住居に泊まらせてもらうのだし、狩猟採集的おゆうはんにしよう、エビをとろうと言い出したのは自分だったし、ヌマエビの命を、他に食べるものがあるのにもかかわらずいただくことにしてしまったこと。

 

私はほんとうによく間違える。至らなさ満載のでこぼこ人間。申し訳ないです。

 

その夜は、チームシェルパの京子さんが縄文遺跡の竪穴式住居を参考にご自分で建てたという、竪穴式住居に泊まらせてもらって、まだ肌寒かったので焚火のおきを囲んだまま眠った。

 

横になって少ししたら、身体全体がズンッと一段、地面のほうに降りた感覚が来た。よく休まった。明け方、一度目覚めて、細い薪をおきにくべて少し空気を送って火をおこし、空間を温めた。竪穴住居はとても快適だった。鳥の声がたくさんした。

 

■旅の終わりに、またトンボ

 

翌朝、われわれのあとに昨日少年がひとりで川におりて採ってきていたエビたちが、まだバケツの中にいたので、早朝、川に放しに行って、そこでエビたちに挨拶して、昨日のことを謝って、感謝を伝えた。

 

相方と親友たちとおいしい朝ごはんをつくって食べて。ゆっくりすごしてから、チームシェルパを後にして、ギャラリートラックスへ行った。坂口恭平さんの絵を眺めて、最後、カフェのスペースに行くと、棚の上に置かれていたオブジェにトンボの遺体が添えてあった。あ、最後にまた、トンボ。

 

また、メッセージを思い出した。忘れては、思い出す、の繰り返しだった。